2019 年 39 巻 7 号 p. 1307-1311
症例1は54歳男性。腹痛を主訴に前医を受診し,腹部CTで肝腫瘍破裂の診断となり当院へ救急搬送された。原因不明の肝破裂で計2回の経カテーテル的動脈塞栓術を施行した後,入院後12日目に腹部打撲歴が判明し,肝損傷後66日目の遅発性肝損傷(Ⅰb)と診断した。症例2は59歳女性。膵癌術後179日目に交通事故で,救急搬送されたが左肋骨骨折,右肋軟骨損傷の診断で帰宅となり,以降症状は消退していた。受傷後29日目に呼吸困難感が出現し,当院受診。腹部CTで遅発性肝損傷(Ⅰb)の診断で入院加療となった。肝損傷のうち肝被膜下破裂症例では受傷後早期に症状や所見が認められないことがある。受傷後4週間以上無症状で経過し,その後肝損傷が発覚し,集学的な治療介入が必要な場合がある。受診直前の外傷歴のない肝腫瘍破裂様や肝損傷様の画像を見た際は,4週以上遡っての外傷歴の詳細な聴取が重要である。