2020 年 40 巻 3 号 p. 479-482
Segmental absence of intestinal musculature(以下,SAIM)は腸管の部分的な固有筋層の欠損で成人では非常にまれである。症例は60歳台女性。検診でのバリウムによる上部消化管造影検査の2日後,下痢を主訴に当院救急外来受診。CTでS状結腸内と腸間膜内にバリウム塊と周囲に腸管外ガスと脂肪織濃度の上昇を認めた。消化管穿孔の診断で緊急手術となりS状結腸壁の菲薄化と腸間膜内にバリウムを含む便塊の貯留を認めハルトマン手術を施行した。肉眼所見では腸間膜付着部側に直線的・帯状に固有筋層の欠損と穿孔を認めた。組織学的所見でも同様でSAIMとそれに伴う消化管穿孔の診断となった。バリウム排泄による腸管内圧の上昇によりSAIMによる腸管壁の脆弱部分に穿孔が発生したと考えられた。SAIMの病変に対する手術時には多発病変の検索や腸管内圧が上昇しないように留意するべきである。