2020 年 40 巻 7 号 p. 827-830
症例は56歳の男性で突然の発熱,腹痛を認め当院受診した。右下腹部に限局した圧痛,反跳痛を認めた。血液検査で炎症所見を認め,腹部CTで回盲部周囲の脂肪織の濃度上昇,上行結腸,終末回腸付近に憩室を認めた。回腸憩室,上行結腸憩室穿通による限局性腹膜炎と診断し,保存的治療を行った。第6病日において,症状改善なく炎症所見も上昇したため,手術を施行した。回盲部に膿瘍形成を認めたが,炎症は限局していた。開腹下に回盲部切除術を施行した。病理検査所見では,回腸末端付近の憩室に穿孔を認め,周囲の脂肪組織に膿瘍形成を呈したと考えられ,回腸憩室穿通症と診断した。術後経過は良好であり,術後10日目に退院した。小腸憩室は比較的まれな疾患であり,ほとんどが無症状のまま経過する。今回,回腸憩室穿通により腹膜炎を生じた1例を経験したので報告した。