2020 年 40 巻 7 号 p. 889-892
症例は19歳男性。右下腹部痛を主訴に当院を受診した。腹部造影CT検査で回盲部腸管の上行結腸への順行性の重積を認め,腸重積症の診断となった。大腸内視鏡検査を施行し,原因検索および整復を行った。盲腸に粘膜下腫瘍様の隆起性病変を認めるものの,明らかな悪性腫瘍は認めなかった。一旦は症状の改善を認めたが再発し,緊急手術を施行した。腹腔鏡下に整復を行うも,腸管の癒着が強固であり,完全に重積を解除するのは困難であった。再重積のリスクを考慮し,腹腔鏡補助下回盲部切除術を施行した。病理組織学的所見では器質的病変を認めず,特発性腸重積症の診断となった。成人の腸重積症は悪性腫瘍など器質的疾患を伴うことが多く,特発性腸重積症はまれである。術前に大腸内視鏡検査を行うことで,明らかな悪性腫瘍がないことを確認でき,術式の決定に有用であった1例を経験したので文献的考察を含め報告する。