日本腹部救急医学会雑誌
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症例報告
腹腔側および腸間膜側の2ヵ所に穿孔を認めた特発性小腸多発穿孔の1例
長谷川 毅中本 健太郎筑後 孝章
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2021 年 41 巻 4 号 p. 245-249

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抄録

腹腔側・腸間膜側へ2ヵ所穿孔した特発性小腸多発穿孔の1例を経験したので報告する。症例は80歳,女性。下腹部痛・嘔吐を主訴に前医を受診され,腹部CTで腹腔内遊離ガスを認めたため,消化管穿孔疑いで当院へ紹介搬送となった。当院CTではイレウス像と腹腔および後腹膜腔に遊離ガス像を認めた。ガス像は後腹膜腔主体で腹部所見が乏しいことから,イレウス管を留置し抗生剤加療を開始した。約12時間後に再検査を施行したところ,CT・血液検査は著変なかったが,腹部所見が増悪傾向であったために緊急手術を行った。術中所見で,骨盤腔に一塊となった小腸があり,同部位に穿孔を認めたため,小腸部分切除術を施行した。切除標本で穿孔部は腹腔側と腸間膜側の2ヵ所に認めた。病理診断の結果は,穿孔部に原因となる腫瘍や異物・血管病変などは指摘できず,特発性小腸穿孔と診断された。術後経過は良好で術後15日目に退院した。

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© 2021, Japanese Society for Abdominal Emergency Medicine
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