2021 年 41 巻 4 号 p. 261-264
77歳男性。発熱と左季肋部痛で当院紹介となり,腹部CTで結腸癌が穿通した脾腫瘤の診断で入院となった。CT上,脾腫瘤は膵尾部に近接するものの膵臓に明らかな腫瘤性病変は認めなかった。抗生物質による保存的治療とし,内視鏡検査などの精査する予定であったが,入院翌日に腹痛増悪とともに頻脈性心房細動および急性呼吸窮迫症候群を発症した。非侵襲的陽圧換気療法と薬物治療で入院2日目に呼吸状態は改善したが,腹痛と高熱が持続するため診断と治療を兼ねる目的で緊急手術の方針とした。脾腫瘍は膵尾部との強固な癒着と,さらに胃大弯側および結腸に浸潤しており,胃部分切除と結腸部分切除を伴う膵尾部切除脾摘出術を施行した。病理組織診断は膵尾部を主座とし,広範に脾臓への浸潤を認める低分化型管状腺癌であった。画像上,膵臓に腫瘤を認識できない脾腫瘤性病変の鑑別診断に膵癌の脾浸潤を念頭に置く必要があると考えられた。