2021 年 41 巻 4 号 p. 273-276
症例は86歳,男性。噴門狭窄を伴う3型進行胃癌で当院へ紹介されたが,高齢でADLが低下していたため,内視鏡下に食道胃接合部に食道ステントを留置し,転院とした。今回,胆囊炎が疑われ,再度当院へ紹介となった。約3ヵ月前に留置した食道ステントが断裂し,肛門側断裂片が十二指腸に逸脱し,胆管炎・胆囊炎を併発していた。内視鏡操作で十二指腸に存在するステント断裂片を胃まで誘導し,その後,小開腹でステント断裂片を摘出した。内視鏡的消化管ステント留置術は切除不能な悪性消化管狭窄に対する姑息的治療法の1つで,外科手術と比べて,低侵襲で,QOL改善効果も遜色ないが,まれに致命的な合併症をきたすことがあり注意を要する。また,食道ステント断裂は極めてまれな合併症で,本邦における報告例はなく,自験例が初の報告である。