2021 年 41 巻 7 号 p. 583-586
症例は78歳女性。呼吸困難と心窩部痛を主訴に救急搬送された。来院時はショック状態で,全身チアノーゼ,pH 6.9のアシドーシスを認めた。造影CT検査では上腸間膜動脈領域腸管の広範な造影不良域があり,腹腔動脈・上腸間膜動脈は根部の特定が困難だった。腸管虚血領域が広範であり全身状態不良で手術困難と判断し経過観察の方針となったが,翌朝に全身状態が著明に改善した。発症8日後のCT検査では,腸管血流の改善と上腸間膜動脈根部のわずかな描出を認めた。後日の血管造影検査では下腸間膜動脈から腹腔動脈と上腸間膜動脈への側副血行路を認め,この存在が上腸間膜動脈支配領域の腸管血流の維持に寄与したと考えられた。最終的に3ヵ月の入院治療を要したが食事摂取良好な状態で退院した。急性腸間膜動脈虚血症は緊急で侵襲的な治療を要することが多いが,非侵襲的治療のみで改善したまれな1例を今回経験したため文献的考察を加え報告する。