日本腹部救急医学会雑誌
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症例報告
腹腔鏡下に異物除去術を行った魚骨の胃壁穿通による肝膿瘍の1 例
長田 祥子世古口 英井上 昌也加藤 健宏
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キーワード: 魚骨, 肝膿瘍, 腹腔鏡
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2022 年 42 巻 1 号 p. 29-32

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抄録

魚骨穿通による肝膿瘍はまれである。今回われわれは,胃から肝臓への魚骨穿通により発症した肝膿瘍の1 例を経験した。症例は66 歳,女性。心窩部痛を主訴に外来を受診した。CT で胃から肝左葉へ穿通する線状構造物を認め,魚骨穿通と診断した。上部内視鏡検査では胃内腔に魚骨は認めなかった。緊急で腹腔鏡下手術を施行した。術中所見では胃壁から外側区域に穿通する魚骨を認め,これを抜去した。肝膿瘍は単発で異物除去により膿瘍腔が開放されたため肝臓を穿刺ドレナージする必要はないと判断した。腹腔内洗浄後,肝下面にドレーンを留置して手術を終了した。術後経過良好で,術後第13 病日に退院となった。魚骨穿通による肝膿瘍に対しては抗生剤,経皮経肝膿瘍ドレナージ(percutaneous transhepatic abscess drainage:PTAD)などの前治療後に異物除去が行われることが多い。今回われわれはすみやかに腹腔鏡手術を施行し,魚骨除去とドレーン留置のみで良好な結果が得られた。文献的考察を加え報告する。

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