2023 年 43 巻 1 号 p. 73-76
症例は79歳,女性。75歳で腹腔鏡下胆囊摘出術の既往があり,77歳より臍部ポートサイトヘルニアを指摘されていた。来院2ヵ月前より右下腹部痛,2週間前より右下腹部の硬結を自覚し,発熱・食思不振を主訴に受診した。腹部造影CTで右下腹部に腹腔から皮下まで連続する膿瘍と,その直下に腫大した虫垂を認め,臍部には回腸を内容とする腹壁ヘルニアを認めた。穿孔性虫垂炎による腹壁膿瘍と臍部ポートサイトヘルニアの併存が疑われた。入院当日に経皮的膿瘍ドレナージを行い,入院9日目の膿瘍腔造影では膿瘍腔の縮小と,虫垂と膿瘍腔との瘻孔を認めた。根治目的に入院14日目に虫垂切除術,ポートサイトヘルニア修復術を施行した。経過良好で再発を認めない。虫垂炎はしばしば遭遇する疾患だが,虫垂炎から腹壁膿瘍を形成する例はまれである。穿孔性虫垂炎から右下腹部腹壁膿瘍をきたしたまれな1例を経験したため報告する。