日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
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43 巻, 1 号
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原著
  • 稲田 亘佑, 平松 和洋, 青葉 太郎, 有元 淳記, 石井 健太, 西野 真史, 折原 薫也
    原稿種別: 原著
    2023 年 43 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    【背景】近年,イレウスと腸閉塞を区別することが推奨されているが,いまだその概念は浸透していない。その原因として,診療報酬請求に用いられるICD10対応標準病名マスターのなかに「腸閉塞」という傷病名が存在しないことがあげられる。【対象および方法】「イレウス(ICD10コード K567)」およびそれに準ずる傷病名を主病名として2014年から2018年までに当院に入院した199症例を後方視的に再検討し,それぞれの病態にもっとも相応しい病名をつけた。【結果】199症例に対し23種類(断定困難を除く)の病名があがった。現在の狭義のイレウスに該当するものは15例のみだった。【結論】「イレウス」およびそれに準ずる傷病名が現在の狭義のイレウスを越えてさまざまな病態で用いられていた。今後,腸閉塞およびイレウスが正確に用語選択されることで,実態に応じた臨床研究の一助となることが期待される。

症例報告
  • 服部 圭祐
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 43 巻 1 号 p. 35-38
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は72歳,男性。糖尿病性腎症で血液透析を受けており,10ヵ月前に重症虚血肢を伴う両総腸骨動脈・外腸骨動脈閉塞に対しステント留置を伴う血管内治療を受けた。今回,敗血症で入院し,シャントグラフト感染が原因と判明したため,明らかに感染の及んでいないグラフト-上腕動脈吻合部を温存し,それ以外のグラフトを抜去した。血液とグラフトの細菌培養検査ではMRSAが検出された。グラフト抜去日に右鼠径部痛が出現し,徐々に増強した。造影CTで,右外腸骨動脈のステント留置部に仮性動脈瘤が疑われ,ステント感染を診断し,手術を施行した。FFバイパス作成後に,右外腸骨動脈起始部でステントを離断し,腸骨回旋動脈分岐の中枢まで,右外腸骨動脈をステントごと抜去した。術後経過は良好で,CTで感染の再燃はなくバイパスの開存を認めている。ステント感染に対しては,症例に応じた外科的血行再建が重要であり,文献的考察を加えて報告する。

  • 河野 万希子, 高地 良介, 大西 賢, 笹嶋 奈津子, 池田 裕一, 皆川 輝彦, 本田 善子, 深澤 由里, 栃木 直文, 島田 長人, ...
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 43 巻 1 号 p. 39-42
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は53歳,男性。仕事中に転倒し右側腹部を柵に強打した既往があった。右側腹部の打撲後より右側腹部痛が出現したが,症状が改善しないため受傷の翌日に前医を受診し,急性腹症が疑われ当科紹介となった。腹部所見では右側腹部に腫瘤を触れ圧痛著明で,前医での造影CT所見では上行結腸の腸管壁構造の破綻を疑う所見を認めた。受診3時間後のCT所見で右側結腸に血腫の増大を認めたため,同日緊急で開腹で結腸右半切除術を施行した。腹部鈍的外傷による消化管損傷には穿孔や腸間膜損傷が多く,壁内血腫はまれで好発部位としては十二指腸にもっとも多い結腸の外傷性壁内血腫は極めてまれであり,文献的考察を含め報告とする。

  • 尾﨑 裕介, 松本 旭生, 原田 岳, 林 忠毅, 落合 秀人
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 43 巻 1 号 p. 43-46
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は80代,男性。40℃台の発熱を主訴に受診し入院となった。入院後のCTで肝外側区域の膿瘍と魚骨を疑う膿瘍内異物を認め,胃壁を貫いた魚骨による肝膿瘍と診断,同日経皮経肝膿瘍ドレナージ術を施行した。ドレナージ7日後に血圧低下,頻脈を認め,CTで魚骨先端が心囊腔へ達したことによる心タンポナーデと判断,緊急手術を施行した。術中所見では,胃壁から逸脱し肝外側区域および横隔膜を貫通する魚骨を認めた。魚骨を引き抜くと横隔膜貫通部から血性排液が約200mL排出された。肝外側区域切除,心囊ドレナージ術を施行し,術後15日目に退院した。魚骨による食道穿孔から心タンポナーデを生じた症例は報告されているが,腹腔内経路からの心膜損傷は国内では報告がない。本症例では魚骨が胃壁を貫き肝外側区域に達し,臓器の呼吸性移動や心拍動の影響により頭側へ移動した結果横隔膜を貫通し,心膜を損傷したものと考えられた。

  • 安田 有希, 荒木 孝明, 平嶋 倫亮, 川村 真理, 小野 文徳
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 43 巻 1 号 p. 47-50
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は88歳,男性。腹痛と嘔吐を主訴に受診し,腹部CT検査で右腎周囲を中心に後腹膜右半に及ぶ広範な気腫を認めた。消化管穿孔を第一に疑い緊急手術を行ったが,消化管に異常所見を認めなかった。一方,胆囊底部が壊死し後腹膜へ穿通しており,後腹膜気腫の原因と考え胆囊摘出と洗浄ドレナージを行った。術後は広域抗菌薬投与を含めた集中治療を行ったが,敗血症,播種性血管内凝固症,多臓器不全を併発し第9病日に死去された。腹水および血液培養からClostridium perfringensが検出され,本病態の起因菌と考えられた。本菌は自然界に広く存在し,気腫性胆囊炎をきたしてもドレナージや手術治療により多くが治癒するが,まれに敗血症から致死的となる。今回,急性気腫性胆囊炎が後腹膜へ穿通し,Clostridium perfringens感染に伴う広範な後腹膜気腫を呈して死に至った極めてまれな症例を経験したので報告する。

  • 堂本 佳典, 藤井 幸治, 金森 泰光, 山内 洋介, 松井 俊樹, 熊本 幸司
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 43 巻 1 号 p. 51-54
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は52歳,女性。刃渡り約20cmの包丁で自身の腹部を刺し,自身で抜いて倒れているところを発見され,当院に搬送となった。来院時,出血性ショックだがresponderであった。腹部造影CTを施行し腹腔内出血を示唆する所見を認めたが,明らかなextravasationは認めなかった。出血源不明であったが,止血・損傷部修復目的に緊急手術を施行した。肝S3辺縁に裂傷を認め,止血した。肝十二指腸間膜より出血を認め,損傷部検索したところ,門脈貫通創の診断で縫合閉鎖し止血を得た。胆囊摘出後,胆道造影で胆管損傷がないことを確認した。術中RBC 6単位,FFP 6単位の輸血を要した。術後1日目に施行した腹部超音波検査で左右の門脈血流を確認できたため,3日目より食事を開始した。希死念慮が強く7日目に精神科に転院となった。

  • 過外 真隆, 伊藤 康博, 藤岡 舞, 堀之内 友紀, 尤 礼佳, 原田 裕久
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 43 巻 1 号 p. 55-58
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(transabdominal preperitoneal repair:以下,TAPP)術後に腹膜閉鎖部の裂隙へ小腸が嵌入し腸閉塞に至った症例を経験したので報告する。症例は74歳男性,両側鼠径ヘルニアに対してTAPP施行,術後4日目に嘔吐し来院した。造影CTで左鼠径部の腹膜閉鎖部付近に小腸の口径差のある腸閉塞を認めた。イレウス管による保存加療では改善せず,術後15日目に腹腔鏡下腸閉塞解除術を施行した。左鼠径部の腹膜閉鎖部内側端に裂隙を認め,小腸が嵌入しメッシュと一部癒着していた。小腸を腹腔内へ還納し腸閉塞を解除し,裂隙を再縫合した。腹膜閉鎖部裂隙への小腸嵌入による腸閉塞はTAPP術後に特有と考えられ,一般的な腸閉塞とは異なる特徴をもつ。手術時には腹膜の隙間ない縫合閉鎖を心がけることが必要で,腸閉塞発症後は早期診断と早期外科的治療が必要であると考えた。

  • 荒巻 政憲, 佐藤 博, 長澤 由依子, 蔀 由貴, 渡邉 公紀
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 43 巻 1 号 p. 59-62
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は77歳,女性。上腹部痛を主訴に来院した。3年前,胆囊癌に対して拡大胆囊摘出術を施行し術後2年4ヵ月目に胃転移を認めS-1内服中であった。単純CTで胃前庭部に穿孔があり同部に連続してfree airを認め穿孔性腹膜炎と診断し緊急開腹術を行った。胃前庭部前壁に大きな穿孔があったため幽門側胃切除,B-Ⅱ再建を行った。術後は合併症なく経過し17病日に退院した。穿孔性腹膜炎を発症した胆囊癌胃転移の1例を経験したので報告する。

  • 日並 淳介, 畑 倫明, 中村 真司, 我如古 理規, 水野 礼
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 43 巻 1 号 p. 63-67
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は60歳の男性,交通事故による鈍的腹部外傷で救急搬送された。腹部造影CT検査でS状結腸腸間膜に仮性動脈瘤を疑う所見および不安定型骨盤骨折を認めたが,腹腔内出血や血腫は認めなかった。救急外来で骨盤骨折に対し創外固定術を行った後,再度腹部CTを施行し新たな異常を認めず保存的治療の方針で入院した。入院後,血圧が60mmHg台に低下しショックとなった。輸血投与を行ったが血圧は安定せず,受傷7時間後に再度腹部CTを施行し,腹腔内に大量の血液像とS状結腸間膜付近に造影剤漏出像を認めた。腸間膜損傷部からの遅発性出血と診断し緊急開腹手術を行った。開腹すると約2,500mLの血液貯留およびS状結腸外側の腹膜損傷部からの活動性出血を認め,縫合止血した。術後経過は良好であり整形外科に転科した。腹部外傷患者の診療において,腸間膜損傷に伴う遅発性仮性動脈瘤破裂の可能性に留意し診療を行う必要がある。

  • 髙橋 義也, 鍵谷 卓司, 市澤 愛郁, 山本 孝夫
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 43 巻 1 号 p. 69-72
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は51歳の女性で,幼少期にTurner症候群と診断されている。腹痛と嘔吐を主訴に来院し,腹部CT検査で回腸に腫瘤性病変による閉塞と口側の小腸拡張を認めた。腫瘍マーカーが高値であり,悪性腫瘍による腸閉塞の診断で入院となった。経鼻イレウス管で減圧を行い,小腸内視鏡では小腸外腫瘍の圧排が原因と考えられた。腸閉塞解除と根治術目的に開腹すると,回盲弁から約10cm口側の回腸に腫瘍性病変による狭窄が認められ,虫垂先端および右卵管へ浸潤していた。既往を踏まえて産婦人科へコンサルトも行い,子宮付属器腫瘍ではなく消化管原発腫瘍と考えられたため,浸潤臓器の合併切除を伴う回盲部切除術およびリンパ節郭清を施行し,病理組織学検査で虫垂粘液癌と診断された。術前診断が困難な虫垂粘液癌であっても消化管原発腫瘍を疑い根治切除を行うことで良好な転帰をたどることができると考えられたため,文献的考察を加えて報告する。

  • 大谷 菜穂子, 松本 理沙, 岡田 晋一郎, 菅沼 利行
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 43 巻 1 号 p. 73-76
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は79歳,女性。75歳で腹腔鏡下胆囊摘出術の既往があり,77歳より臍部ポートサイトヘルニアを指摘されていた。来院2ヵ月前より右下腹部痛,2週間前より右下腹部の硬結を自覚し,発熱・食思不振を主訴に受診した。腹部造影CTで右下腹部に腹腔から皮下まで連続する膿瘍と,その直下に腫大した虫垂を認め,臍部には回腸を内容とする腹壁ヘルニアを認めた。穿孔性虫垂炎による腹壁膿瘍と臍部ポートサイトヘルニアの併存が疑われた。入院当日に経皮的膿瘍ドレナージを行い,入院9日目の膿瘍腔造影では膿瘍腔の縮小と,虫垂と膿瘍腔との瘻孔を認めた。根治目的に入院14日目に虫垂切除術,ポートサイトヘルニア修復術を施行した。経過良好で再発を認めない。虫垂炎はしばしば遭遇する疾患だが,虫垂炎から腹壁膿瘍を形成する例はまれである。穿孔性虫垂炎から右下腹部腹壁膿瘍をきたしたまれな1例を経験したため報告する。

  • 岡田 純一, 瀨尾 雄樹, 原 裕明, 西 雄介, 杉浦 清昭, 岸田 憲弘, 戸倉 英之, 高橋 孝行, 清水 和彦
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 43 巻 1 号 p. 77-81
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は75歳,男性。1日前からの右下腹部痛を主訴に当院受診し,CT検査で骨盤内に120×80×65mm大の囊胞性腫瘤を認め,虫垂と連続していることから虫垂粘液囊腫と診断した。腹痛を伴っており,破裂の危険性があることから緊急手術の方針とした。鏡視下に観察すると虫垂は腫大し,根部側で軸捻転をきたしていた。囊腫を愛護的に扱い,損傷なく摘出した。病理学的には低異型度虫垂粘液腫瘍(low-grade appendiceal mucinous neoplasm:以下,LAMN)であった。LAMNの軸捻転症はまれな疾患であり,腹腔鏡下切除についての報告例は少ない。LAMNの腹腔鏡下切除についての考察を加えて報告する。

  • 小林 達矢, 渡邊 将広, 林 英司, 河原 健夫, 桐山 宗泰, 陸 大輔, 伊佐治 博章, 長谷川 泉
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 43 巻 1 号 p. 83-87
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は72歳,男性。胸部不快感を主訴に当院救急外来を受診。精査中に救急外来で大量吐血し,バイタルサインが低下した。腹部造影CTで膵体尾部に12mm大の脾動脈瘤および胃内への造影剤漏出を認め,脾動脈瘤胃穿破と診断した。同日緊急経カテーテル動脈塞栓術を施行し,脾動脈をコイル塞栓し止血を得た。入院第3病日の腹部dynamic CTで膵尾部に動脈相で低吸収,平衡相で濃染される不整腫瘤を認めた。上部消化管内視鏡検査では胃体部後壁に潰瘍性病変を認め,生検の結果,腺癌であった。以上より膵体尾部癌胃浸潤と診断した。本例の病態として,①膵尾部癌が脾動脈へ浸潤し脾動脈瘤が生じ,さらに②膵尾部癌が胃壁に浸潤したことで脾動脈瘤と胃に交通ができ,消化液に晒された結果,脾動脈瘤が破裂したと考えられた。食事開始後も再出血なく経過し,第15病日に退院となった。

  • 寺田 剛, 稲村 幸雄, 齋藤 尚子, 穐山 竣, 延廣 征典, 森 千浩, 上畑 恭平, 武澤 衛, 森川 彰貴
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 43 巻 1 号 p. 89-92
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    マントル細胞リンパ腫(mantle cell lymphoma:以下,MCL)は予後不良で,完全寛解後も再発し,腸重積を引き起こすことがある。患者は83歳男性で,2年5ヵ月前にMCLと診断され,bendamustineとrituximabの併用化学療法による完全寛解後,経過観察されていた。今回,嘔吐を主訴に受診した。CTと下部消化管内視鏡検査で小腸と大腸に多数の粘膜下腫瘍と,終末回腸の腫瘍による回盲部の腸重積,多発リンパ節腫大を認めた。イレウス管で腸管を減圧後,有症候性の腸重積をきたしていたため腹腔鏡下回盲部切除術を施行した。病理組織学的検査でMCLの再発が確認された。術後の経過は順調で,術後17日目から化学療法を再導入し,完全寛解を得た。腹腔鏡下手術は,低侵襲で,化学療法の早期導入につながることから,リンパ腫による腸重積に対して有効である。

  • 上松 由昌, 旗手 和彦, 桑野 紘治, 大越 悠史, 坂本 友見子, 金澤 秀紀
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 43 巻 1 号 p. 93-96
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    80歳,女性。脳室腹腔シャントカテーテル(ventriculoperitoneal shunt catheter:以下,VPSC)留置中。4日続く右下腹部痛で受診,膿瘍形成性虫垂炎と診断した。高齢,抗癌化学療法中で手術リスクが高く,盲腸への炎症波及で拡大手術が予想された。膿瘍とVPSC先端は離れており,逆行性中枢神経感染リスクは低いと考えた。待機的虫垂切除を行う方針とし,経皮的膿瘍ドレナージと抗菌薬を開始した。経時的に炎症は改善したが,第4病日に新規膿瘍の出現とVPSCの膿瘍近傍への変位を認めた。逆行性感染リスクが上昇したと判断し緊急手術を行った。虫垂根部から盲腸の炎症は改善を認め,拡大手術は回避可能であり,虫垂切除とVPSC抜去を行った。VPSC留置患者の虫垂炎に対し,経皮的ドレナージを行った報告は本例がはじめてであるが,経過中にVPSCが変位することがあり厳重な管理が望まれる。

  • 伊達 俊輔, 岡田 禎人, 太平 周作, 鈴木 和志, 石田 陽祐
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 43 巻 1 号 p. 97-100
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は72歳,男性。以前から右鼠径ヘルニアを指摘されていたが自身で整復していた。右鼠径部痛を主訴に当院救急外来を受診した。経過中に来院時の身体所見で圧痛を伴う右鼠径部腫脹を認めた。造影CTでヘルニア内に小腸の脱出を認め,右鼠径ヘルニア嵌頓と診断した。用手整復できたため翌日待機的に手術を行った。手術は全身麻酔下に鼠径切開法で開始した。ヘルニア囊を開放するとヘルニア囊内に精巣を認め,停留精巣と診断した。癌化の可能性があるため泌尿器科医師の指導の下で精巣を摘出し,direct Kugel法によるヘルニア根治術を施行した。切除標本の病理診断では悪性所見を認めなかった。術後経過は良好で手術翌日に退院した。停留精巣は若年で診断されることが多く,本症例のように成人で停留精巣と鼠径ヘルニアの合併は非常にまれである。術中に診断した1例を経験したので文献的考察を加えて報告する。

  • 佐野 智弥, 宮下 正寛, 山口 大輝, 山本 匠, 三浦 拓也, 江口 真平, 西村 潤也, 大河 昌人, 田中 宏, 上西 崇弘
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 43 巻 1 号 p. 101-104
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は87歳,女性。労作時呼吸困難で当院を受診,胸部CT検査で脾から胃にかけて径13cm大の腫瘤性病変を指摘された。上部消化管内視鏡検査で胃体中部大弯側に巨大な粘膜下腫瘍を認め,生検でびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と診断された。化学療法により病変は縮小したが,治療開始51日目に吐血し出血性ショックに陥った。腹部CT像で悪性リンパ腫の胃穿破による消化管出血が疑われたが,内視鏡所見で胃脾瘻孔部が大きく止血困難なため緊急手術を行った。開腹したところ胃は凝血塊で緊満していたが腹腔内出血はなく,脾門部を切離して出血を制御した後浸潤している胃を部分切除して脾臓を摘出した。術後経過は良好であった。病理所見では,脾および胃壁の腫瘍はすべて壊死組織となっており化学療法が著効したと考えられた。

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