2023 年 43 巻 4 号 p. 753-756
症例は53歳の男性で1週間前からの腹痛で当院を受診した。造影CTで上腸間膜静脈血栓症(superior mesenteric vein thrombosis:以下,SMVT)と小腸重積を認め,小腸腫瘍による腸重積と診断し同日開腹手術を行った。Treitz靭帯より約310cmの回腸に腫瘍による重積を認め,術前の画像診断で血栓は広範囲であったものの腸管の血流は良好であったため,同部位の小腸部分切除のみ行った。術後翌日からヘパリン投与を開始し合併症なく術後14日目に退院した。本症例は凝固因子欠損症や凝固亢進をきたしうる背景はなく,腸重積により腸間膜静脈の還流不全からSMVTを発症したと考えられたため文献的考察を加えて報告する。