2023 年 43 巻 4 号 p. 785-788
40代女性,腹痛と嘔吐を主訴に受診した。回盲部腸閉塞と診断され入院となった。イレウス管による保存的加療で軽快し退院となったが,1ヵ月後に腸閉塞を発症し再入院となった。腹部CT検査で,回盲部の狭窄に伴う腸閉塞と診断した。下部消化管内視鏡検査で回腸終末部に全周性の輪状潰瘍性病変を認めた。潰瘍部の生検では,多彩な炎症細胞浸潤,炎症性肉芽を認めた。原因として腸結核などの炎症性腸疾患,腫瘍性病変による腸閉塞が考えられ,診断,治療を兼ねて腹腔鏡下回盲部切除術を施行した。病理組織学検査で,壊死を有するラングハンス巨細胞を伴った類上皮肉芽腫を認めたが,乾酪性肉芽種は認めなかった。抗酸菌染色で抗酸菌は同定できなかった。QFT検査は陽性であり腸結核と診断した。既往歴,接触歴は明らかでなく,喀痰塗抹検査,便培養検査でも結核菌の排菌は認めなかった。本邦における腸結核で発症した腸閉塞症例を検討考察し,自験例を報告する。