2025 年 45 巻 1 号 p. 1-4
小腸憩室穿孔は比較的まれな病態であるが致死率も高いとされ,急性腹症の鑑別診断において重要な疾患である。今回当院で行った小腸憩室穿孔手術7症例を対象に,臨床病理学的特徴をまとめ検証した。平均年齢は73.7歳で,男女比3:4,全例で腹痛を認めたが発症から受診まで経過が長い症例では腹痛が軽度の傾向があり,来院時ショックバイタルを呈する症例はなかった。術前に小腸憩室穿孔と診断できたのは4例で,画像での部位特定は必ずしも容易ではなく,術中所見で空腸穿孔が5例(いずれもTreitz靭帯から110cm以内),回腸穿孔2例(いずれも末端部)と判明した。全例で小腸切除を施行され,生存退院した。近年の画像診断能向上や周術期全身管理の発達により小腸憩室穿孔は従来ほど致死率の高い疾患ではないことが示唆されたが,自覚症状が軽微であることがあり,遅滞なく診断・外科的治療を供することは予後向上に重要である。