2026 年 46 巻 6 号 p. 672-675
症例は89歳女性。消化管穿孔による汎発性腹膜炎が疑われ,同日緊急手術を施行した。術前より循環動態は不安定であり,迅速な手術開始が望ましい状況であった。全身麻酔導入後,1%クロルヘキシジングルコン酸塩エタノール製剤で腹部消毒および臍窩の追加消毒を行った。消毒液が十分乾燥しない状態で皮膚切開および電気メスを使用したところ,体表の消毒液,ガーゼおよび覆布に着火した。ただちに消火したが,上腹部を中心に一部深達性を含むⅡ度熱傷を認めた。術中は冷却および局所処置を行い,術後は保存的加療で経過観察したが,一部に壊死組織を認め,後日デブリドマンを要した。アルコール含有消毒液は揮発性が高く,乾燥不十分な状態では可燃性ガスが滞留し,電気メスなどの点火源により容易に火災や熱傷をきたす。本症例は,消毒液の適正使用と十分な乾燥確認を含む周術期安全管理の重要性を再認識させる症例であった。