2004 年 24 巻 5 号 p. 927-931
症例は74歳, 女性. 上腹部痛を主訴に当院を受診した. 腹部X線所見でfreeairを認めたため穿孔性腹膜炎の診断で緊急入院した. 入院後施行した上部消化管内視鏡検査所見では胃体部前壁に穿孔を伴う潰瘍を認めた. 胃穿孔の診断で緊急手術を施行した. 胃壁は全体的に硬化, 肥厚しており, 胃体部前壁に3mm大の穿孔部を認めた. また, 腸間膜に腹膜播種結節を認めたためBorrmann 4型胃癌の穿孔と診断した. 胃全摘術, 腹腔内ドレナージ術を施行した. 病理診断は低分化腺癌であった. 術後40日目に退院したが術後2ヵ月目に腹膜再発で死亡した. 上部消化管穿孔のなかでBorrmann 4型胃癌穿孔はまれでその予後は極めて不良である. 治療にあたっては穿孔性腹膜炎としての全身状態の把握と胃癌の進行程度を考慮した術式の選択が必要である.