日本腹部救急医学会雑誌
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癒着性腸閉塞に合併したMRSA腸炎の1例
金子 雅宏大杉 治司東野 正幸竹村 雅至李 栄柱藤原 有史岩崎 洋
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2004 年 24 巻 5 号 p. 933-937

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抄録

症例は62歳, 男性.腹部大動脈一両側大腿動脈バイパス術4ヵ月後に嘔吐を伴う腹痛のため入院.入院時, 腹部所見, X線所見などより腸閉塞と診断し, イレウス管挿入を試みたが, 自己抜去を繰り返し, 入院4日後に留置可能となった.入院9日目より高熱, 頻脈が出現, イレウス管から1日3, 000cc以上の白色水様性の排液を認めた.その後イレウス管の先端は閉塞部まで達したが, 排液の減少なく, 麻痺性イレウスの状態となり, 血圧低下, 頻脈も著明となったため, 入院20日後に試験開腹術を行った.回腸末端部より約80cm口側で回腸と回腸の癒着と口側回腸の拡張を認め, これを解除した.また術前のイレウス管の排液からMRSAが検出されたが, vancomycin投与により軽快した.癒着性腸閉塞に合併したMRSA腸炎の報告はまれであるが, イレウス管の排液の性状や臨床症状の変化に注意し, MRSA腸炎の疑いがあれば細菌培養同定の前に迅速な対応が必要である.

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