日本腹部救急医学会雑誌
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腹部銃創の1例
小松 周平下松谷 匠小渕 岳恒
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キーワード: 腹部銃創, 鉛中毒
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2004 年 24 巻 5 号 p. 975-978

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抄録
欧米に比べ銃所有に対する規制が厳しく銃創の頻度が極めて少ない本邦では, その治療戦略におけるknow-howが熟知されているとはいいがたい. 近年の犯罪の欧米化や国際情勢の不安定さを考慮すると, 銃創に対する適切な治療方針を改めて理解しておくことは重要である. 今回われわれは, 腹部銃創の1例を経験したので報告する. 症例は53歳男性.狩猟中に誤って, 左側腹部にライフルの鉛銃弾を受け, 当院救命救急センターに搬送された. 受傷直後のCTでは, 明らかな腹腔内臓器損傷は認めなかったが, 緊急鉛銃弾摘出術と小切開試験開腹術で臓器損傷なきことを確認した. 術後経過良好で, 9PODに退院となる. 腹部銃創では, 銃創の損傷機転を十分に考慮にいれ, 臓器損傷が否定できない場合は可及的に低侵襲で腹腔内検索を行うべきである. また, 長期的な視点から遺残鉛銃弾による鉛中毒の危険性を考慮にいれ, 低侵襲で摘出可能な場合, 全摘出を行うことが重要であると考えられた.
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