日本腹部救急医学会雑誌
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当院で経験した上腸間膜静脈血栓症8例の検討と文献的考察
熊野 秀俊小林 健二
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2006 年 26 巻 5 号 p. 603-608

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抄録

上腸間膜静脈血栓症 (superior mesenteric venous thrombosis: SMVT) は, 比較的まれな疾患である. 近年では保存的治療による症例報告も散見されるが, 保存的治療に対する適応や血栓溶解剤の投与方法など, 標準的な治療法はいまだ確立されていない. 当院において1991年~2004年までにSMVTを8例経験した. この8例を開腹手術により腸管切除術を要した群 (R群n=6) と, 腸管非切除術群 (NR群, n=2) とに分類し, 両群に特徴的な差違があるかを検討したが, 腸管壊死による血性腹水や腹膜刺激症状以外に治療方針を決定する上で有用となる指標はなかった. SMVTを診断し腸管壊死を疑う場合には, 開腹手術を選択する. 一方, 腸管壊死の所見がなく腹部症状が軽微な場合は, 上腸間膜静脈内の血栓溶解療法を試みるべきであろう. そのためには, 急性腹症の診断に際し常にSMVTを念頭に置き, 発症早期に治療を開始することが必要である.

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