日本腹部救急医学会雑誌
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健常な中年女性に発症した非閉塞性腸管虚血症 (NOMI) の1例
西 健矢野 誠司板垣 友子片岡 佳樹小池 誠橋本 幸直板倉 正幸
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2006 年 26 巻 5 号 p. 691-694

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抄録

健常な中年女性に発症した非閉塞性腸管虚血症 (以下, NOMI) の1例を経験した. 症例は42歳, 女性. 2005年10月朝, 排便後突然に下腹痛が出現した. 血液生化学検査, 腹部単純X線, CTではとくに異常所見を認めなかった. 経過観察するも, 腹痛は増強し筋性防御も出現したため, 再度CTを行い腹水の出現と小腸壁の肥厚を認め, 緊急開腹術を施行した. 手術所見では, 回腸末端より約2m口側から80cmにわたり限局した小腸壊死がみられた. 病理所見では主幹動脈に血栓・動脈硬化などの器質的変化による閉塞は認めなかった. 一般に, NOMIは心疾患を有する高齢者で急性循環不全に伴うことが多く, 健常な中年女性に発症するのは極めてまれである. 突然に激烈な痛みを伴う急性腹症には, 腸間膜動脈閉塞などの器質的閉塞だけでなく閉塞がない腸管虚血・壊死も念頭に置く必要がある.

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