日本腹部救急医学会雑誌
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胃・十二指腸潰瘍穿孔保存的治療の標準化
クリニカルパス導入による医療の質・医療経済の均一化を目指して
石倉 宏恭中野 良太香村 安建大矢 浩史畑 啓昭片山 宏小木曽 聡小泉 欣也
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2006 年 26 巻 7 号 p. 845-850

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抄録

胃・十二指腸潰瘍穿孔症例に対する保存的治療はおおむね確立し, 医療の質の均一化および医療経済面におけるfutileの軽減が今後の課題である.これらの背景を踏まえ, われわれは15日間のクリニカルパス (CP) を作製し, 2000年10月から2006年6月までの5年9ヵ月間に34症例に対して運用し.この間, 5例にvarianceが発生し, CP完遂率は83.3% (29/34) であった.また, 33例 (97.1%) で穿孔部の自然閉鎖が得られ, 本CPは実践に耐え得る治療ツールであると思われたさらに, 2002年1月から開始した退院時患者アンケート調査 (集計数11例) では全例80%以上の満足度 (うち6例で100%) で, 再発時もCPによる保存的治療を希望した患者は9例 (81.8%) と患者満足度評価からも推奨される治療法であると思われた.以上, variance症例の再評価ならびに患者アンケート調査結果より, 本CPのEntry criteriaを以下のごとくに設定した.まず, 全身状態が安定している患者で, (1) 65歳以下, (2) 精神疾患 (一), (3) 腹腔内液体貯留が少量, (4) 癌疾患の既往 (一) の4項目を満たした患者.また, 入院期間を13日とするCPの改訂作業も開始した.以上, 本疾患に対するCPを用いた保存的治療は医療・経済面におけるquality controlに優れ, 加えて患者満足度評価からも推奨される治療法であると考えられた.

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