日本腹部救急医学会雑誌
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十二指腸潰瘍穿孔に対する保存的治療の有用性と適応基準
永野 元章島山 俊夫佛坂 正幸近藤 千博千々岩 一男
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2006 年 26 巻 7 号 p. 851-854

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抄録

十二指腸潰瘍穿孔に対する保存的治療は安全性, 有用性の面からも確立されつつある治療である.保存的治療が可能か診断し安全に遂行するうえで, 適応基準の確立が求められている.当科では1989年より保存的治療を導入し, 現在その適応基準を全身状態良好である, US, CTで腹水が少量で限局している, ガストログラフィンを用いた上部消化管造影検査で造影剤の漏出がないか, あっても穿孔部からの漏出距離が2cm以下のものとしている.初診時の上部消化管造影検査は穿孔部の被覆状況を把握するうえで非常に有用で, 適応基準における保存的治療の完遂率を96%と向上させ, 腹腔内膿瘍の合併も減少させる.当科の基準では十二指腸潰瘍穿孔症例の半数で保存的治療が可能であった.厳重な経過観察のもと安全に行われれば, 十二指腸潰瘍穿孔に対する保存的治療はほぼ確立した治療法として推奨される.

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