抄録
メディア・リテラシー教育の現状は,操作中心教育に偏重する傾向があり,メディアの特性理解と適切な選択の学習(Learning about Media)の遅れが否めない。そこで,総合的なメディア・リテラシー教育を支援する番組として, NHK学校放送「体験!メディアのABC」が2001年に始まった。本研究では,この番組(キャッチコピーの回)を教材とした授業実践の効果について,小学校5年生を対象に実験した。その結果, 4時間の授業で番組視聴とコピー制作を実践した実験群が,番組視聴のみの実験群と何もしない統制群よりメディア・リテラシー理解度が有意に上昇し,肯定的反応と高い学習意欲と発展活動の兆しも見られた。教師も実践の手ごたえを感じ,番組の意義を認めていた。番組がメディア・リテラシー教育の教材として,子どもたちのメディアとの上手なつきあい方を学ぶのに,適切な教材であることが示唆された。