教育メディア研究
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教材映画『石炭』にみる教師の教育映画観 : 1920年代後半から30年代前半における学校教育と映画の関係の一側面
佐藤 知条
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2012 年 18 巻 1-2 号 p. 25-36

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抄録

本稿では映画の教育利用を推進する全日本活映教育研究会の監修で1933年に作られた理科の教材映画『石炭』の内容を分析して教師や教育関係者の思想との関連を考察した。映画は教科書だけで授業を展開させるのが難しい部分を補完するように作られていた。これは教師が教材映画に求めていたことと一致していた。このことは娯楽性と興行性の排除とも関連するため,興行映画製作者を排除し教育関係者の手で教育映画を作ろうとする思想の表れとも解釈できる。一方で映画には教科書にはない場面も存在した。ここには,時間とともに場面が変化するメディアであるために映像の一貫性やつながりへの考慮が生じるという映画特有の事情が影響していたと考えられる。教師はこの場面に映画の教科横断的な利用可能性を見出していたことから,『石炭』は当時の教師の教育映画観を反映したものであるとともに,彼らの教育映画観に影響を与えるものでもあったと考えられる。

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© 2012 日本教育メディア学会
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