抄録
本稿は2007年参院選香川選挙区を事例として,集票システムの在り方と候補者・政党による有権者へのアピールに注目しながら,民主党候補者の選挙キャンペーンの分析を行った。香川選挙区は民主党の支持基盤が脆弱であり,候補者・政党が新たな支持者を獲得するための努力が必要とされるとともに,民主党本部が戦略的に重視した選挙区であった。こうした選挙区を分析対象とすることで,選挙キャンペーンにおける政党と候補者の位置づけを把握することが可能になるだろう。
本事例からは,民主党候補者の集票システムは政党という単位が実質的な意味を持つものの,候補者の自律性を前提とした緩やかな連合体となっていること,集票を機能させる媒介も候補者の特性に基づくものが中心であったことが観察された。本稿は,これまで十分な検討対象となってこなかった民主党候補者の選挙キャンペーン研究に新たな知見を加えるとともに,民主党組織を議論する上でも興味深い材料を提供するものと考える。