2009 年 25 巻 1 号 p. 47-60
本稿では,政策過程における対立軸と,知事-議会間関係に着目して,神奈川県水源環境保全税の導入決定過程を分析する。政策過程で生じた「都市部」対「水源地域」という対立軸は,課税方式の決定過程では導入を阻害したのに対し,議会審議では導入の実現をもたらした。この相違は,課税方式の決定過程の途中で交代した2人の知事(岡崎洋,松沢成文)が異なる課税方式を選択したことによる。統一政府であった岡崎県政では,知事は受益と負担の関係という理念的正当性を重視して法定外税方式を選択し,「都市部」対 「水源地域」の対立が生じて導入には至らなかった。しかし,中間政府であった松沢県政では,知事が課税の費用負担者との取引コストが低い県民税超過課税方式を選択した結果,「都市部」対「水源地域」という対立が存在する中で水源税の導入が実現した。