2010 年 26 巻 1 号 p. 26-37
政治的リーダーシップとは,個人的な資質から生まれるものなのか,それとも構造に依拠するものなのか,いずれが正しいのであろうか。日本においても,小泉首相が発揮した(とされる)強力なリーダーシップをめぐって,政治改革や行政改革など,制度的な要因の帰結なのか,「ポピュリスト」的なスタイルの産物なのか,様々な議論がある。本稿も同様の問題意識に立ち,二つの要因の役割について考察する。具体的には,自民党総裁選における党員投票を分析の対象とする。党員投票とは,党内民主主義を促進するための制度であるだけではなく,党首が指導力を発揮するために必要な政治的エネルギーを調達するための装置でもある。そこで,選挙制度改革が党員投票を伴う総裁選の常態化をもたらすメカニズムを検証し,構造的な変化と政治家の個性が果たす役割について,インプリケーションを得ることを目標とする。