2011 年 26 巻 2 号 p. 60-72
本稿は,2009年衆院選の前後に実施された2波の全国パネル調査データに基づき, この選挙時におけるメディアへの接触が有権者に対してどのような影響を及ぼしたのかを明らかにし,それを通じてメディアと選挙との今日的関係について考察することを目的とする。分析の結果,(1)政治的知識への効果に関しては,特定のテレビ番組や対人ネットワークが知識の3次元のすべてにプラスに働くのに対し,新聞やインターネットの効果は限定的である,(2)メディア接触は内閣への業績評価・期待,政党リーダーへの感情に対しては一定の影響を及ぼしているが,経済状況認識や争点態度に対する影響は僅かである,(3)投票方向に対するメディア接触の影響は,一部のテレビ番組視聴を除いてほとんど見られない,などの点が明らかとなった。これを受けて,メディアの影響力に関する有権者の実感と上記の知見との架橋について考察する。