選挙研究
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2009年総選挙における稲作農家の政治意識と投票行動
自民党農政の担い手たちに対する感情に注目して
河村 和徳
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ジャーナル オープンアクセス

2011 年 26 巻 2 号 p. 73-83

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抄録

2009年総選挙では,多くの稲作農家が民主党に投票した。本稿では,サーヴェイ・データを用い,彼らの政治意識と投票行動について分析を試みる。分析の結果,彼らの投票行動の背景には,自民党・農林水産省・農協という,これまでの自民党農政の担い手に対する負の評価と,戸別所得補償を掲げる民主党への期待があった。また減反政策の是非はもはや争点ですらなく,個別所得補償への期待の程度が自民党に投票するのか,それとも民主党に投票するのかを分かつ重要な要因であった。更に,2009年の時点で,零細兼業農家と大規模化を進めてきた専業農家の間で,民主党や自民党農政の担い手に対する感情の違いが生じており,また政治との関わり方についても意見の違いがみられた。政権交代の影響もあり,政党に対し中立の立場をとりたいという農家が多く存在し,これまでの「農家が一枚岩で自民党を支える」という見方が成り立たなくなっていることが,本稿で明らかとなった。

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© 2011 日本選挙学会
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