本論文では,実験室実験による投票研究の動向を整理し,課題と展望を論じる。議論を「選好の形成を捨象したうえで,与えられた投票のルール・環境のもとで複数の実験参加者たちに一斉に票を投じてもらい,その行動データを用いて,投票のルール・環境が投票行動および投票結果に与える影響を分析しようとする実験室実験」に限定したうえで,その種の実験を「投票の費用の有無(投票参加)」および「候補者(投票の選択肢)が2人か3人以上か(投票方向)」の組み合わせによって分類し,それぞれ先行研究の一部を概観する。それらをふまえたうえで,今後の課題と展望として,実験室実験の「風洞実験」としての役割,実験室における選挙の再現可能性,政治的文脈の効果の検証について議論する。