選挙研究
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インドネシアの選挙と議会
その変遷と不変性
井上 治
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ジャーナル オープンアクセス

2013 年 29 巻 2 号 p. 33-47

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抄録

インドネシアで初の国政選挙すなわち国民代表議会(DPR)議員選挙が行われたのは独立宣言から10年後の1955年である。だが,比例代表制で行われた選挙の結果,最大政党でさえ議会で占める議席数は4分の1にも達せず,議会運営は安定しなかった。その結果,1957年にスカルノ初代大統領は,与野党の対立する西欧型民主主義を否定して,インドネシアの伝統と慣習に基づく「相互扶助」内閣すなわち実質的な総与党体制の構築に踏み切った。1965年の政変を経て30年余にわたり大統領の座に君臨したスハルト第2代大統領時代も「政治はNo,開発はYes」といった政党政治を忌避するスローガンが掲げられ続けた。1998年5月のスハルト退陣後インドネシアは民主化へ向けた改革を進めているが,現在でも政治的不安定への危惧から国軍将兵への選挙権の付与や共産主義政党の合法化には踏み切れていない。

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© 2013 日本選挙学会
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