抄録
2016年アメリカ大統領選挙については,多くの論者がヒラリー・クリントンの圧勝を予想した。にもかかわらず,実際はドナルド・トランプが勝利した。本稿は何故そのような事態が発生したのかを説明しようとする試みである。クリントン敗北に影響した要因として,選挙戦術の失敗,私的メール使用問題,サンダース旋風,中南米系や女性票を十分に固めきれなかったこと,民主党左傾化への反発を説明する。他方,トランプに勝利をもたらした要因としては,二大政党の分極化が進み有権者の意向とのズレが明確になってくる中で,トランプが社会的争点について過激な発言を繰り返すことで単一争点問題の活動家の支持を確保する一方,経済的争点については穏健な立場をとって中道派の支持を確保したことを指摘する。また,反エスタブリッシュメント感情の高まりや白人労働者階級がトランプを支持した理由も解明する。