期日前投票制度の創設により投票率は変化したのだろうか。投票するタイミングや場所の選択肢が増えたことにより普段は投票に行かない人々が参加するようになったのであれば,投票率は向上したはずである。一方,この制度を利用しているのが普段から投票に行く人々であれば,投票率は大きく変化していないだろう。本稿は2005年から2014年にかけての衆院選における市区町村パネルデータを用い,市区町村内の期日前投票所数の増加により投票率が上昇したという暫定的エビデンスを提示する。この結果は,期日前投票制度が普段は投票に行かない人々の参加を促した可能性を示唆する。さらに,選挙の投票所数も投票率と密接に関連していることも示し,期日前投票所数と選挙日投票所数のどちらの変化が投票率により大きな影響を及ぼすかを議論する。