2017 年 33 巻 2 号 p. 41-57
米社会では長期的に見ると人種・民族の多様化が進み,性別や人種による格差が縮小する一方で,産業の空洞化によって低スキルの雇用は減り,学歴に基づく格差が拡大している。2016年の大統領選挙で共和党のトランプ候補は大量の移民が職を奪い,犯罪を増やすなどの主張を繰り返してきた。社会における白人の比較優位が失われる中,こうした社会の多様化と学歴格差の拡大の影響を強く受けている白人高卒有権者がトランプ氏の主張を好感したことが考えられる。本稿では州レベルの投票データと全米選挙調査などの調査データを使い,社会の変容を経済的,社会的な「脅威」と見る白人高卒有権者がトランプ候補に魅力を感じ,彼らの支持が同氏の当選に大きく貢献したことを示す。