抄録
昨今の西欧諸国の選挙で顕著であったのはポピュリストと評される新党であった。本論は時期同じく選挙があったリヒテンシュタインに着目して考察を行う。ただし人口・面積とも乏しい同国では対立争点が発生し難く,新党が必要なことも少ないと考えられる。だが従来2党制のリヒテンシュタインでは,現在「5党制」の様相を呈している。なぜ5つもの党が乱立したのか。本論では,同国の政党政治の「再編成」について歴史的過程へ注目しつつ分析を行う。そこではまず戦前の欧州で流布した「民主化革命」が同国の政治制度を媒介に2党制を形作ったことを確認する。そして戦後までの2党制の保存と再編について社会変革を促した各局面での選挙制度,執政府制度,経済状況に着目して,必要条件と十分条件の組み合わせから説明を試みる。