選挙研究
Online ISSN : 1884-0353
Print ISSN : 0912-3512
ISSN-L : 0912-3512
35 巻, 2 号
選挙研究
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 2つの民主主義の共振
    河野 勝, 荒井 紀一郎
    2019 年 35 巻 2 号 p. 5-18
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/09/12
    ジャーナル オープンアクセス
    現代の民主主義は,エリートレベルでの「競争」とマスレベルでの「代表」という,2つの異なる政治過程との関連において特徴づけられ,理解されてきた。本稿の目的は,戦後日本を題材にして,様々な調査データを効果的に組み合わせて利用することにより,競争プロセスと代表プロセスとが織りなす交差の動態を明らかにする。まず,記述統計に依拠して,圧力団体が一般有権者を念頭において行う活動のパターン,また有権者の側の圧力団体への関与のパターンを,検証する。続いて,平均構造モデルを用いて,競争と代表のプロセスが互いに影響を及ぼしあう「行動的共振(behavioral synchronization)」とでも呼べる現象を浮き彫りにする。具体的には,分野ごとまた時代ごとに異なる圧力団体の影響力や戦略に応じて,当該団体に関与する人々の政治的有効性感覚が変動することを示す。
  • 2019年統一地方選挙の分析から
    大木 直子
    2019 年 35 巻 2 号 p. 19-37
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/09/12
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は,「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」(以下,候補者男女均等法)施行後はじめての全国規模の選挙である 2019年4月実施の統一地方選挙のうち議員選挙を取り上げ,自治体レベル別・党派別・男女別にデータを整理し,政治的リクルートメントの観点から,2019年の統一地方選挙において,女性の議会進出がどこまで進んだか,政党は女性候補者をどのように擁立したのか,について明らかにすることを目指す。2015年のデータと比較すると,2019年統一地方選挙では,女性候補者割合,女性当選者割合ともにすべての自治体レベルで過去最高を記録したが,地方議会全体で女性議員の増加率はわずかであった。日本の地方議会への女性の参画は着実に進んだが,なぜ「微増」だったのか。政党所属の議員割合が高く,最も女性の進出度が低かった道府県選を考察した結果,男性候補者が減少傾向であるのに対して,新人の女性候補者数やその当選率,1位当選の女性候補者数は上昇していること,その一方で,新人の女性候補者の増加が一部の政党に留まったことから,女性候補者・当選者の大幅な増加には至らなかったことが明らかになった。
  • 鈴木 創
    2019 年 35 巻 2 号 p. 38-53
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/09/12
    ジャーナル オープンアクセス
    投票率は選挙結果にいかなる影響を及ぼすだろうか。日本において広く受け入れられている見方は,組織化と動員を投票参加の主要因とみなし,高い投票率は組織的な支持基盤を持つ政党には不利に,無党派層・浮動層に依存する政党には有利に働くとする。本稿は,2001 ~ 2014年に行われた 10回の国政選挙における投票率の党派的効果を推定する。推定結果は「常識的」な見方を支持せず,組織化と動員が投票率効果の因果メカニズムの一部に過ぎないことを示唆する。また,推定結果は,投票率の効果が参院選と衆院選で異なることを示す。たとえば,自民党得票率に対する効果は,前者では正,後者では負の傾向がある。こうした違いは,投票率の効果が投票者の党派構成の変化だけでなく, 政党支持層の離反率の変化からも生じることを意味している。
  • 「投票権保障」と「選挙の公正」の間
    大倉 沙江
    2019 年 35 巻 2 号 p. 54-70
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/09/12
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では,障害等のある有権者の「投票権保障」の観点から設けられた投票制度を取り上げ,①それらの制度を利用することができる有権者の範囲と利用するための手続きはいかに変化してきたのか,②有権者の範囲と手続きが変化することによって投票への参加や障害等のある有権者を巻き込んだ選挙不正にどのような変化があったのか,③変化がなかったとすれば,それはどのような理由によるのかを明らかにする。分析の結果,①いずれの制度についても,制度が緩和され対象として想定される有権者数は増える傾向にあるが,②公職選挙法違反が増加しなかったかわりに,投票への参加も増えなかった。③この背景として,「投票権保障」の観点から利用対象を拡大すると同時に,「投票の公正」の観点から投票に必要な手続きを厳格化してきたことが理由のひとつとして存在することを指摘した。
  • 今井 亮佑
    2019 年 35 巻 2 号 p. 71-85
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/09/12
    ジャーナル オープンアクセス
    いわゆる「一票の較差」問題に対する有権者の認識を明らかにするために,2019年春に「熟慮型WEB調査」を実施した。そのデータを分析した結果,次のような点が明らかになった。(1)国政選挙が終わるたびに,投票価値に不平等がある状態で行われた選挙の無効を求める訴訟が提起されるが,そうした訴訟に関心を持つ人も,重要性を認める人も,さほど多くはない。(2)「一人一票」の原則が厳格に守られることを求める人はごく少数にとどまり,ある程度の「一票の較差」が生じるのはやむを得ないと考える人が多数を占める。(3)較差問題への対処法をその短所とともに回答者に示し,それについてよく考えるよう促すと,較差問題に対処するには「副作用」も伴うことを理解するため,「一票の較差」の許容範囲について,対処法に対する賛否とも整合的な,より寛容な態度を示すようになる傾向がある。
  • 堀田 敬介, 根本 俊男, 和田 淳一郎
    2019 年 35 巻 2 号 p. 86-102
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/09/12
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は,堀田(2015)の複数選出選挙区制(大選挙区制)に対応した最適化モデルを,数理的に同じ問題となる合区を設定する問題(合区と配分議席を求める問題)に適用し,参議院選挙区制における最適な合区を明示し,限界較差分析により合区の効果を測定することである。なお,モデルの目的関数として一票の最大較差を最小化する以外にα-divergenceを採用する。これは,個人還元主義に基づく評価指数としてWada(2012,2016)で採用された,分布間の擬距離を測る指数である。このとき,合区を許す数を所与として設定限界まで増やして行った場合の,各指標に関する一票の較差や平均からの乖離の変化と選挙区分布を提示し,合区の可能性を検証する。例えば,3カ所の合区を許せば,一票の最大較差を3倍未満にでき,8カ所許せば2倍未満を達成することがわかる。
  • 西ヨーロッパ政党政治の再編成への一考察
    新川 匠郎
    2019 年 35 巻 2 号 p. 103-120
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/09/12
    ジャーナル オープンアクセス
    昨今の西欧諸国の選挙で顕著であったのはポピュリストと評される新党であった。本論は時期同じく選挙があったリヒテンシュタインに着目して考察を行う。ただし人口・面積とも乏しい同国では対立争点が発生し難く,新党が必要なことも少ないと考えられる。だが従来2党制のリヒテンシュタインでは,現在「5党制」の様相を呈している。なぜ5つもの党が乱立したのか。本論では,同国の政党政治の「再編成」について歴史的過程へ注目しつつ分析を行う。そこではまず戦前の欧州で流布した「民主化革命」が同国の政治制度を媒介に2党制を形作ったことを確認する。そして戦後までの2党制の保存と再編について社会変革を促した各局面での選挙制度,執政府制度,経済状況に着目して,必要条件と十分条件の組み合わせから説明を試みる。
  • 2019 年 35 巻 2 号 p. 121-129
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/09/12
    ジャーナル オープンアクセス
  • 三船 毅
    2019 年 35 巻 2 号 p. 130-134
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/09/12
    ジャーナル オープンアクセス
feedback
Top