選挙研究
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中選挙区制における候補者擁立戦略
勝又 裕斗
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ジャーナル オープンアクセス

2021 年 37 巻 1 号 p. 72-85

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抄録

日本で長期間にわたり用いられている中選挙区制は,同一政党内の候補者間で得票の移譲ができないため,大政党は獲得議席最大化のために候補者数を適切に調整し,その間で得票を適切に配分する必要がある。既存研究ではこの戦略の失敗を候補者数に注目して分類してきたが,この分類は票割りの失敗および共倒れという戦略の失敗の理由による分類と一致しないという問題がある。本稿は戦略の失敗を票割りの失敗と共倒れによって新たに分類し,戦後衆議院議員総選挙における自民党の戦略の失敗を分析する。その結果,票割りの失敗と共倒れはともに減少したが,それは環境の変化と戦略の向上という異なる要因によることが分かった。さらに,候補者数抑制により共倒れは減少したが,その選挙区では票割りの失敗が続いた。戦略の失敗の減少は,戦略の向上ではなく,失敗が起こりにくい競争環境の増加によるものであった。

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© 2021 日本選挙学会
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