2021 年 37 巻 2 号 p. 13-21
本研究では,人の態度や行動に影響する状況要因として,居住環境に存在する社会資本や文化資本の充実度に注目して,その指標として位置情報ゲームのPOI(Point of Interest)情報を提案し,その妥当性を,計算社会科学的なアプローチで検討した。まず「ポケモンGO」の「ポケストップ」がどの程度設置されているかを,その所在地の緯度経度情報に基づいて算出した密度で指標化した。そして,この指標と,当該地域の市民を対象とした社会調査データとの関連を検討した。空間解像度の異なる2つのデータを用いた分析の結果,解像度の粗いデータでは居住環境に対する満足度との間に有意な正の相関が認められたが,密なデータでは無相関であった。密度以外の特徴を加味した検討の必要性と,様々な人工物を環境的な手がかりとして利用することの意義について議論した。