本稿では地元に利益を導入する政策課題を政治家がどのように考え取り上げるのかという点について,対象と内容によりカテゴライズされた選挙公約を用い,実証的に検討した。その結果,地元利益指向の公約は保守系候補者に多く,内容的には運輸•建設•地域経済振興関連が主で通産•文教•農水が準じること,90年代の三回の総選挙では90年が最多で93年や96年には減少したこと,地元利益指向の公約は選挙に強く,特に93年以降は圧倒的だったことを明らかにした。また地元利益指向に多く言及する政治家の特徴を知るために,二つの仮説を得票率や当選回数との関係を通じて検討した。わが国の場合,基本的に選挙に強く政治力を有する候補が地元利益を多く訴える。しかし同時に若手議員など選挙に弱い政治家が地元利益に頼る傾向も否定できない。このことは,政治力を要する体系だった利益配分の構造が,改革が叫ばれた90年代においても存在する一方,分野や規模の「棲み分け」により脆弱な候補も地元利益をめぐる政治過程に参加できることを示唆している。