1999年に実施された愛媛県松山市長選挙は,相乗り候補に対して政党の支援を受けない候補者が当選したという点で注目に値する選挙であった。この松山市長選挙を分析した結果,相乗りに批判的な態度をとる有権者が必ずしも新人候補者を支援していたわけではなく,また政治不信も有権者が新人を志向することとは直接的な関連性はなかったことが,明らかとなった。一方,県議選挙直後における現職知事の新人支持発言とそれに伴う自民党愛媛県連の推薦見送りは,現職志向の有権者の態度変容を促す結果となっていた。その傾向は,政治的関心が高く地方の政治に不満を有していた有権者に顕著にみられた。本稿の分析結果は,相乗り候補者に対して草の根候補者が対抗するためには不信と投票方向を結びつける媒介変数が必要なことを示唆している。