2010 年 52 巻 11 号 p. 737-741
人類の知る数学体系の中で,すべての力と物質を統一的にかつ矛盾なく記述する可能性のある唯一の理論は,超弦理論である。超弦理論は,物質と力を記述している素粒子がすべて小さな「ひも」から構成されているとする仮説である。この仮説は一つの数学体系を超え,現在では,素粒子論,宇宙論,重力理論,物性理論,そして原子核物理学へと多彩な応用がなされ,新たな基礎数学の成立へ,次元を超えた展開を見せている。本稿では3回にわたり,素粒子論,宇宙論,そして原子核物理学への超弦理論の応用を,平易な言葉で紹介する。