2011 年 53 巻 8 号 p. 550-554
福島第一原子力発電所の事故では,運転中であった1号,2号,3号炉のすべてで炉心溶融が生じ,炉心の大部分が溶融して原子炉圧力容器の底に流下したと報じられ大きな衝撃を与えている。事故収束に向け,溶融炉心の長期冷却確立のための準備が鋭意進められているが,健全な炉心の冷却とは大きく異なることから,燃料の崩壊,溶融の状況を正確に認識した上で適切な対策が求められる。本稿は,この事故の炉心で生じた事象を理解するために,過去に経験した炉心溶融事故のスリーマイル島原子力発電所事故や関連研究の知見を踏まえ,炉心露出事故時の燃料の崩壊から溶融までのふるまいを概説したものである。