日本原子力学会誌ATOMOΣ
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Print ISSN : 1882-2606
解説
原子力発電所の全交流電源喪失規制はなぜ遅れたか
大津波の可能性の知見がなぜ福島第一発電所に活かせなかったか
宮坂 靖彦
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2012 年 54 巻 1 号 p. 32-35

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抄録

 東京電力福島第一発電所のシビアアクシデントについて,事故時の対応,規制等の観点から十分に調査・検証する必要がある。それにしても原子力発電所の全交流電源喪失(SBO : Station Blackout)規制はなぜ遅れたのか。また,地震・津波の発生の可能性は,専門家から知らされていたのになぜ耐震規制に反映できなかったか。日本の原子力施設の耐震対策は,1995年兵庫県南部地震から数年後に本格検討が始まり,大幅改訂の耐震設計審査指針が公表されたのが2006年9月である。この間に新潟地震があったといえ,あまりに遅く残念である。改めて,安全研究の重要性と適切な規制体系の再構築が必要である。独立した規制機関の再構築が検討されているが,その第一歩はこれまでの対応を解明することである。

 本報では,洪水による外部電源喪失事象,津波による冷却ポンプ機能喪失など教訓とすべき事象,米国及びフランスのシビアアクシデント規制の状況,わが国の規制取り組み等に関する提言を含め解説する。

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© 2012 一般社団法人 日本原子力学会
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