2013 年 55 巻 1 号 p. 40-47
福島地域の環境修復を早期に適切な形で進めるためには,全体の費用についての見通しを得つつ,リソースの適正な配分等を行っていく必要がある。現時点では,福島地域の除染等については,対象箇所にどのような除染方法が適用されるか,また,除染によって発生する除去土壌及び廃棄物に対して,どのような処理・処分方法が適用されるか確実に固まってはいない状況であり,必ずしも高い確度の費用を算定できない状況であるが,随時,最新の知見から,概略の全費用を試算し徐々に精度を上げていくような取組みが必要である。そこで,日本原子力学会クリーンアップ分科会では,公表されている処理フロー及び単価を活用するとともに,独自のシナリオとして,除染により発生した土壌を汚染濃度により中間貯蔵施設と管理型処分場に分け,また,限定再利用するなどのシナリオを設定し,概算費用の基本ケースとして試算した。その結果,6~9兆円の試算値が得られた。