2013 年 55 巻 3 号 p. 152-160
本稿は,平成24年7月24日に開催された日本学術会議シンポジウム「巨大災害から生命と国土を護る―24学会からの発信」の第6回「原発事故からエネルギー政策をどう立て直すか」における講演をもとに書き下ろした。講演から半年以上経過しているが,現在においても有用な議論の材料となりえる内容であると思う。
まず,我が国のエネルギー政策が掲げていた基本的視点および原子力エネルギーの位置付けについて述べる。次に,事故によって顕在化された原子力エネルギー利用のリスクを5つの視点から提示し,原子力災害リスクを低減するためになすべきことについて提言する。最後に,講演当時におけるエネルギー政策の方向性について確認し,原子力エネルギーを利用する本来的な意味についてまとめる。
原子力発電所の事故におけるリスクをどのように低減することができるか,エネルギーの安定供給性に係るリスクをどのように考えればよいのか,など,多角的な視点からエネルギーを考える一助となれば幸いである。