九州歯科学会雑誌
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第70回九州歯科学会総会・学術大会(2010)シンポジウム「口呼吸と不正咬合のエビデンスを探る」
山口 和憲
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2010 年 64 巻 p. s7

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抄録
口呼吸者は、歯科領域では特に( 1) 顎顔面および歯列咬合の成長発育(咬合育成)に 影響を与え上顎前突、開咬、顎変形症などの咬合異常をもたらす。( 2) 口腔を気道とする ために咀哨嗚下運動に影響を与える。(3)歯肉、歯槽粘膜などの軟組織の炎症や退行性の 病変の引き金になると言われている。特にアングルII級l類の不正咬合と口呼吸との関連 性が示されて以来、D呼吸が上顎前突の原因であると言われてきた。しかし、D呼吸の病 態に対する評価基準がなく、咬合異常による口唇の離開を誤って口呼吸と診断したり、ア ンケート調査で鼻の症状だけで口呼吸と判断したりしている。そのため両者の因果関係は 未だに議論が絶えない。一方、口呼吸へ呼吸様式が変換されると、咬合力の大きさや咀哨 時間の低下や咀咽リズムの乱れが生じ、顎顔面および歯列咬合の垂直的成長発育に影響を 与え、開咬、あるいは切端咬合の発症の原因となる可能性が示唆されている。従って、鼻 閉鎖閉塞をもたらし、口呼吸の原因と考えられる鼻疾患や副鼻腔疾患に対する診断と治療 は呼吸様式の改善につながり、不正咬合の予防に重要であると考えられる。さらに、D呼 吸と関連の深いD唇閉鎖機能不全や顎顔面、歯列咬合の垂直的異常に対する治療も重要に なってくる。 本シンポジウムでは (1)不正咬合の原因としての口呼吸の考察、口呼吸の客観的評価、咀噌を通じた咬合への影響 (2)鼻閉鎖の原因となる鼻疾患の診断と治療(無呼吸性症候群の診断、鼻腔通気度計測、 アデノイド、アレルギー性鼻炎) (3) 口呼吸と関連する不正咬合の治療 l) 上顎前突の治療による口唇閉鎖機能の改善 2) 開咬と舌の訓練 3) 顔面高が大きい症例に対する診断と治療 4) 開咬の通常治療、インプラントを用いた治療、外科的矯正治療 などについての考察を行う。
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© 2010 九州歯科学会
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