2014 年 56 巻 1 号 p. 15-18
2013年の7月末に,「低線量放射線を超えて」というテーマで書物を著して1),早,3ヶ月が経った。本を差し上げた福島の方からの「講演がより良くわかった」との声とともに,「元気づけられた」との声はうれしい限りである。また,京大の先輩の名誉教授の方々には,よく書いたね,よく勉強したねと,ほめられた。いつもは厳しい放射線生物学や分子生物学専門の名誉教授からのお言葉に力を得た思いである。また今回,思いがけず原子力を専門とする方や材料学を専門とする方々から,新しい視点で共感したとの声とともによく書かれましたねと,メイルやらお手紙をいただいた。私たちの分野では当たり前のことを書いたので,この反応は予想外であった。本稿では,この本に込めた想いと,この間異分野の研究者との議論を通して私自身が,学び考えたことを紹介する。