2015 年 57 巻 4 号 p. 252-258
2011年3月11日の福島第一原子力発電所事故。引き続き事故の余波は,福島県浜通りなどから今なお避難を強いられている12万人の皆さんに止まらない。福島に住み続けること選択した多くの人々をも心配させている。事故後4年を経ても「いつまで続くのかも分からない事故の影響」のことが多くの人の心にひっかかっているという状況である。そんななか,それまで放射線被ばくの生体影響というテーマに取り組んだことのなかった物理学者が,“なにかしなければいけない”との思いで学の境界線を気に留めず,乗り込んで来た。学術の越境が知の統合を生み,ここに新たな叡智が生まれようとしている。80年以上続いて来た放射線防護の基本概念が覆される可能性を秘めた研究成果である。