日本原子力学会誌ATOMOΣ
Online ISSN : 2433-7285
Print ISSN : 1882-2606
57 巻, 4 号
選択された号の論文の21件中1~21を表示しています
巻頭言
時論
座談会
  • ―低線量では細胞レベルで修復メカニズムが働く―
    坂東 昌子, 真鍋 勇一郎, 澤田 哲生
    2015 年 57 巻 4 号 p. 252-258
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/02/19
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     2011年3月11日の福島第一原子力発電所事故。引き続き事故の余波は,福島県浜通りなどから今なお避難を強いられている12万人の皆さんに止まらない。福島に住み続けること選択した多くの人々をも心配させている。事故後4年を経ても「いつまで続くのかも分からない事故の影響」のことが多くの人の心にひっかかっているという状況である。そんななか,それまで放射線被ばくの生体影響というテーマに取り組んだことのなかった物理学者が,“なにかしなければいけない”との思いで学の境界線を気に留めず,乗り込んで来た。学術の越境が知の統合を生み,ここに新たな叡智が生まれようとしている。80年以上続いて来た放射線防護の基本概念が覆される可能性を秘めた研究成果である。

解説
  • 長期貯蔵に対処する国際的動向
    三枝 利有, 亘 真澄
    2015 年 57 巻 4 号 p. 259-264
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/02/19
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     原子力発電所の再稼働後,使用済燃料の貯蔵問題が顕在化する。使用済燃料貯蔵の現状と計画を国内外の動向を踏まえて解説する。まず,わが国における金属キャスク貯蔵の現状,計画,試験研究及びコンクリートキャスク貯蔵の必要性,動向,試験研究を紹介する。一方,海外では,近年,貯蔵期間が長期化した場合の安全性への関心が高まっている。このような検討は,わが国にとっても,より一層の安全裕度の確認につながるため,IAEA,米国,ドイツにおける使用済燃料貯蔵の経年劣化管理に向けた動向例を紹介する。

  • 暫定保管の技術的検討内容とシナリオ想定
    田辺 博三, 三枝 利有
    2015 年 57 巻 4 号 p. 265-270
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/02/19
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     日本学術会議は,2010年9月に原子力委員会より「高レベル放射性廃棄物の処分に関する取組みについて」と題する審議依頼を受け,2012年9月に「回答 高レベル放射性廃棄物の処分について」(以下,「回答」という)を提出した。この「回答」の考え方に立脚してさらに対処の方策を前進させるべく,2013年5月に「高レベル放射性廃棄物の処分に関するフォローアップ委員会」(以下,「フォローアップ委員会」)と,その分科会として「暫定保管に関する技術的検討分科会」(以下,「技術分科会」)と「暫定保管と社会的合意形成に関する分科会」(以下,「社会分科会」)が設置された。2014年9月,2つの分科会より報告が行われた。本稿では,技術分科会で検討された暫定保管の技術的検討内容について解説する。

連載講座
報告
  • 中高生のための原子力・科学技術教育プログラムの開発 IAEA専門家会議の動向
    飯本 武志
    2015 年 57 巻 4 号 p. 276-277
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/02/19
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     日本原子力学会・初等中等教育小委員会は2014年秋の大会で「初等・中等教育における放射線・原子力教育の状況」と題するセッションを開催した。本稿では,同セッションでの3件の講演を紹介する。1件目は,アジア・太平洋地区の中高生を対象とした,IAEAによる原子力・科学技術教育プログラムの開発(2012〜2015年)に関する講演である。ここではこの活動の背景と動向,良好事例として紹介された日本の実績例(放射線教育に関する文部科学省の代表的な事業「はかるくんの開発と普及に関する事業」「高校生を対象とした放射線等に関する課題研究支援事業」)について整理する。

  • 科学的に探究する放射線教育及び研究機関等との連携
    佐々木 清
    2015 年 57 巻 4 号 p. 278-279
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/02/19
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     甚大な被害をもたらしている東京電力福島第一原子力発電所事故。当初は放射線の知識や授業プログラムのない状況の中で,2011年度から「放射線教育元年」と位置づけ,試行錯誤しながら原発事故による災害の現状を踏まえた独自の放射線教育を進めてきた。さらに,毎年放射線授業の研究公開を行い,実践研究論文にまとめ発表してきた。
     昨年(2013年)は,放射線教育3年目にあたり,「科学的に探究する力を育む放射線教育」という研究テーマを掲げ,従来行ってきた「放射線の知識を学ぶ」授業から「放射線で科学を学ぶ」授業への転換を図るとともに,研究機関等との連携を図りながら,放射線教育を深めてきた。それらの実践内容をここに報告させていただく。

  • 近畿大学原子炉を用いた教員向け原子炉実験研修会
    若林 源一郎
    2015 年 57 巻 4 号 p. 280
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/02/19
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     近畿大学原子炉は熱出力1ワットの教育訓練用原子炉であり,原子力を専門とする学生だけでなく,一般市民や学校教員が運転を体験できる貴重な施設として活用されている。近畿大学では,昭和62年から教員向けの原子炉実験研修会を毎年開催しており,これまでに数多くの教員の皆様にご参加いただいてきた。最近では,中学理科に放射線に関する項目が導入されたことを受け,原子炉運転体験とともに放射線教育にも力を入れている。本稿では,近畿大学原子炉を用いた原子炉実験研修会について概要を紹介する。

  • 神田 玲子
    2015 年 57 巻 4 号 p. 281-283
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/02/19
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     日本原子力学会では,8月30日にコラッセ福島において,女性のためのフォーラム「低線量放射線の生体への影響と食の重要性」を開催した。周辺住民の方々の中には,これまでに多くの講演会やフォーラムに参加され,放射線に関する豊富な知識を持たれている方も多い。このフォーラムでは,特に,子供の母親である女性の視点で疑問や不安にお答えするということを踏まえ,3名の女性の登壇者に講演いただいた。本稿では,このうち,放射線防護における安全とリスクについて,演者であった神田玲子氏より講演内容を紹介いただいた。

新刊紹介
報告
  • 宇野 賀津子
    2015 年 57 巻 4 号 p. 284-287
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/02/19
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     2011年3月11日の東日本大震災に端を発した福島第一原発事故の影響は,3年以上を経過した今なお12万人以上の方が県内外に避難を余儀なくされている。事故後3年半を経て,事故直後に騒がれた低線量放射線の子ども達への健康影響については,懸念されたような大きな影響はほとんどなかったとほっとする人がいる一方,長期的影響についてまだまだ不安を持っている人が多数いる事も事実である。そして,今なお福島で生きようとする方々の生活に放射線は大きくのしかかっている。既に昨年,本学会誌に「“低線量放射線を超えて”に込めたる想い」を寄稿したので,一部の重複はご容赦願うとして,日本原子力学会シンポジウム 女性のためのフォーラム「低線量放射線の生体への影響と食の重要性」でお話した内容および,この間思いがけず免疫を専門とする人間が,放射線・福島の問題に深く関わり考えたことについて,特に他の研究者があまり触れていない事を中心に,私自身の専門分野との関連から紹介する。

  • 市川 陽子
    2015 年 57 巻 4 号 p. 288-293
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/02/19
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     東日本大震災に伴う東京電力福島第一原発事故後,放射線被ばくによる健康影響について実にさまざまな情報が錯綜し,福島県民は不安と風評の中で暮らしてきた。不安の正体は,先の見通しがつかないこと,何を信用すればいいのかわからないことの2つにつきる。その原因の多くは放射線の誤った情報を信じてしまったこと,正しい情報を正しく理解できないことにあると考える。福島の子どもたちの健やかな成育のためには,私たち大人が放射線について正しい情報をきちんと理解することが不可欠であり,不安や風評に負けない毅然とした心で自信を持って,この地で子育てする強さが必要である。これまでの保護者の方々とのかかわりの中で,放射線に対する誤解や不安がいまだに消えないことを感じている。その解消にはどのような工夫が大切かをまとめてみた。

福島原発事故への各学会の取組
会議報告
連載・福島からの風
理事会だより
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