2016 年 58 巻 7 号 p. 408-412
東京電力福島第一原子力発電所の事故により,大量の放射性物質が海洋に流出した。このため,日本の水産業は甚大な被害を被り,その被害は現在も継続している。事故後しばらくは水産物から比較的高い濃度の放射性セシウムが検出されていたが,2015年度の福島県のモニタリング検査において国の出荷制限基準である100 Bq/kg-wetを超過した海産物は1検体もない。本報告では,福島県海域での水産物汚染の現状を紹介するとともに,その汚染が減少した仕組みや汚染が比較的長期化した一部の魚種についてその理由を解説する。また,報告例の少ない水産物中のストロンチウム-90についても述べる。